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大阪地方裁判所 平成11年(ワ)2124号 判決 2000年6月16日

原告

岡田淳

被告

田中誠

主文

一  被告は、原告に対し、金六六一四万二三五七円及びこれに対する平成八年七月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その二を原告の、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金一億〇五八九万六七八四円及びこれに対する平成八年七月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  争いのない事実等(証拠により認定した事実については証拠を掲記する。)

1(本件事故)

(一)  日時 平成八年七月二九日午前六時二〇分ころ

(二)  場所 京都府長岡京市勝竜寺町一一先国道一七一号線

(三)  加害車両 被告運転の自動二輪車(一大阪ぬ七八一六)

(四)  態様 原告(昭和五三年二月七日生、当時一八歳)が、加害車両に同乗していたところ、被告が前記場所のカーブを曲がり切れず路外に逸脱し走行したため、負傷したもの

2(責任)

(一)  被告は、加害車両を運転して、運転操作を誤り、路外へ逸脱して走行した過失があるから、民法七〇九条に基づく責任がある。

(二)  被告は、加害車両の保有者であるから、自動車損害賠償保障法三条に基づく責任がある。

3(傷害、治療経過、後遺障害)

(一)  傷害(甲二ないし五、六の1ないし3、七の1ないし7)

右大腿骨骨折、右大腿動脈断裂、右下腿骨骨折、右下腿コンパートメント症候群

(二)  治療経過

(1) 財団法人大阪府三島救急医療センター(甲六の1ないし3)

平成八年七月二九日から同年一〇月二四日まで入院八八日間

(2) 兵庫県立総合リハビリテーションセンターリハビリテーション中央病院(甲七の1ないし7)

平成八年一〇月二五日から平成九年一月二六日まで入院九四日間

平成九年一月二七日から同年四月二八日まで通院(実通院日数三日)

(3) 関西労災病院(乙四)

平成九年二月一七日から同年三月一二日まで入院二四日間

(4) 症状固定日 平成九年四月二八日(甲五)

(三)  後遺障害(甲二ないし五)

右大腿切断(後遺障害等級四級五号認定)

4(損害填補)(二二一〇万五九一八円)

(一)  自賠責保険金 一八八九万円

(二)  治療費相当額 二五四万三二五五円

(三)  装具(義足)代 六七万二六六三円

二  争点

1  損害

(一) 治療関係費 三三〇万四八七四円

(1) 治療費 二五六万五二〇二円

(2) 入院雑費 二七万三〇〇〇円

1300円×30日×7か月=27万3000円

(3) 入院期間交通費 一五万四〇八〇円

平成八年七月二九日から平成九年一月二六日までの原告の母親などの付添ないし看護のために病院を訪れるのに必要とした交通費及び原告の外泊のために要した交通費

(4) 医師謝礼 一九万〇九八二円

(5) 看護婦謝礼 七四一〇円

(6) 物品等購入費 七万六三八五円

(7) 文書代 三万七八一五円

(二) 休業損害 八七万七四四〇円

原告は、専門学校(辻フランス料理専門カレッジ)に通う一方、常用アルバイトとして株式会社報知新聞社に勤務していたが、本件事故により右勤務ができなくなった。

(三) 学費 八七万八〇〇〇円

原告は、本件事故による負傷のため、専門学校の履修を断念せざるを得なかったため、支払済みの学費について損害を被った。

(四) 装具費 五七七万八一七五円

装具(義足)代金 六七万二六三三円

原告の平均余命 五八・三一年

装具は五年ごとの更新を要する(一一回)

一一回の新ホフマン係数 八・五九〇

67万2633円×8.590=577万8175円

(五) 車両改造費 六四万八四五五円

三年に一度車両の買換えを要する。

4万9440円×13.116=64万8455円

(六) 逸失利益 八五〇九万九八四〇円

基礎収入 年五六七万一六〇〇円(平成八年賃金センサス男子労働者の全年齢平均賃金)

労働能力喪失率 九二パーセント

就労可能期間 二〇歳(ライプニッツ係数・八五九四)から六七歳(ライプニッツ係数一八・一六八七)まで

567万1600円×0.92×(18.1687-1.8594)=8509万9840円

(七) 慰謝料 二一二〇万円

(1) 傷害分 三二〇万円

(2) 後遺障害分 一八〇〇万円

(被告・原告は本件事故により搭乗者傷害保険金四八〇万円を受領している。)

(八) 弁護士費用 七〇〇万円

2  好意同乗減額

(一) 原告と被告とは、本件事故の前夜、友人数名と京都に行くことになり、被告は、加害車両に乗って京都に出かけたが、原告は自動車に乗っては来なかった。

そして、京都で一晩中遊び、原告らは大阪方面に戻ろうということになったが、その際、原告は、加害車両の後部座席に乗ることとなった。

(二) 本件事故は、原告、被告が京都に遊びに行き、その後大阪に帰る途中で発生した事故であり、その主たる原因は、原告、被告とも急いで大阪方面に向かう必要があったため、制限速度を超過して走行していたところ、被告において急カーブがあることを予期していなかったために発生したものである。

(三) 原告は、被告に京都から大阪まで加害車両に乗せてもらって帰宅しようとしていたのであるから、原告が運行利益を享受していることは明らかである。

また、本件事故は、深夜、京都において徹夜で遊び、そこから大阪に帰宅する途中に発生したもので、しかも、自動二輪車に二人乗りをしていた際に発生したものであって、徹夜の後は、運転者に疲労が生じ、その結果事故に至る蓋然性が高くなることは常識の範疇であり、しかも、自動二輪車の二人乗りは安定性を欠く危険な走行方法であり、公共交通機関を利用して大阪に向かうことも十分可能であって、事故を回避する方途は極めて容易にとることができた。

(四) 以上の状況からすれば、公平の見地からして、発生した損害を同乗者が負担すべきであり、その程度は三割を下ることはあり得ない。

第三判断

一  争点1(損害)

1  治療関係費 二九六万五一三五円

(一) 治療費 二五四万三二五五円

証拠(甲八ないし二〇、弁論の全趣旨)により認められる(文書代を含む。)

(二) 入院雑費 二六万七八〇〇円

前記のとおり原告の入院期間は合計二〇六日間であり、入院雑費は一日当たり一三〇〇円とするのが相当であるから、入院雑費は合計二六万七八〇〇円となる。

(三) 入院期間交通費 一五万四〇八〇円

証拠(証人岡田啓子、原告本人、弁論の全趣旨)によれば、原告の入院期間中ではあるが、原告が病院から自宅で外泊するために要した交通費及び原告の母等が原告の付添看護のために要した交通費を支出しており、これは本件事故と相当因果関係のある損害というべきであり、その額は一五万四〇八〇円であると認められる。

(四) 医師謝礼、看護婦謝礼

医師及び看護婦への謝礼は、患者が任意に感謝の意を込めてなすべきものであり、本件においてもそのような趣旨でなされたものというべきであるから、本件事故との間に相当因果関係を認めることはできない。

(五) 物品等購入費

原告の主張する物品等購入費は、入院雑費において考慮されており、別に請求しうるものではない。

(六) 文書代

前記治療費の額に含めて認定している。

2  休業損害 四四万〇六〇〇円

証拠(甲二一、原告本人)によれば、原告は、株式会社報知新聞社でアルバイトとして稼働しており、本件事故直前三か月間の給与合計は二六万四三六〇円(一か月当たり八万八一二〇円)であることが認められ、本件事故がなければ平成八年一二月までの五か月間は右アルバイトに従事し得たものと認められるから(原告は、通っていた専門学校から平成九年三月末ころフランス留学のために出発予定であった。)、その間の休業損害は、四四万〇六〇〇円となる。

3  学費 六〇万八〇〇〇円

証拠(甲二一、証人岡田啓子、原告本人)によれば、原告は、本件事故による負傷のため、辻フランス料理専門カレッジの平成八年後期の履修を断念せざるを得なくなったものであり、そのために支払っていた六〇万八〇〇〇円相当の損害を被ったことが認められる(なお、原告が平成九年に右専門学校に再入学するために要した費用については、本件事故との間に相当因果関係を認めることができない。)。

4  装具費 二九四万〇八八六円

証拠(甲二五、二九、証人岡田啓子、原告本人)によれば、原告は、本件事故による右大腿切断のために義足(六七万二六三三円)を必要とし、その耐用年数は五年と認めるのが相当であるから、症状固定日(平成九年四月二八日、満一九歳)から平均余命期間五八年の間に一一回の買換えが必要となる。

したがって、装具代の現価をライプニッツ式計算法により算定すると、次の計算式のとおり、二九四万〇八八六円となる。

67万2633円×(1+0.7836+0.6139+0.4810+0.3769+0.2953+0.2314+0.1813+0.1420+0.1113+0.0872+0.0683)=294万0886円

5  車両改造費

車両改造費と本件事故との間に相当因果関係を認めるには至らない。

6  逸失利益 六七九八万七九〇七円

原告は、症状固定時満一九歳の男性であり、本件事故当時専門学校に通っており、満二〇歳から就労し始めたものと認められ、その後六七蔵まで平均して年五六七万一六〇〇円(平成八年賃金センサス男子労働者の全年齢平均賃金)の収入を得ることができた蓋然性が認められるところ、平成一〇年ころからはショットバーに勤務し、月額手取約一七万円(年二〇四万円)(同年代の平均賃金は三二四万九七〇〇円)の給与を得ていること(原告本人)、原告の後遺障害の程度(四級五号)を考慮すると、原告が右収入を上げるために特段の努力をしていること、後遺障害により将来の昇給、転職等において不利益を被ることは容易に推認できることを考慮しても、労働能力喪失率は七〇パーセントとして算定するのが相当であるから、原告の逸失利益をライプニッツ式計算法により算定すると、次の計算式のとおり、六七九八万七九〇七円となる。

567万1600円×0.7×(18.0772-0.9523)=6798万7907円

7  慰謝料 一七〇〇万円

原告の本件事故による慰謝料は、傷害分及び後遺障害分を合計して一七〇〇万円と認めるのが相当である。

右については、原告が既に被告が締結していた自動車保険から搭乗者傷害保険金四八〇万円を受領していること等本件に表われた諸般の事情を考慮した。

8  以上を合計すると九一九四万二五二八円となる。

二  争点2(好意同乗減額)

証拠(原告本人、被告本人)によれば、本件事故は、事故前夜から原告、被告を含む友人らで京都に遊びに出かけ、徹夜で遊んだ後、原告が被告の運転する加害車両の後部座席に同乗して自宅に帰る途中に発生したものであり、本件事故以前から加害車両は制限速度を超過して走っていたこと、被告はこれを制止する等の行為に出ていないことが認められ、本件事故発生の主たる原因は被告の運転操作の誤りにあることを考慮しても、損害賠償制度の理念である公平の見地からすると、前記損害額からその一割を減額するのが相当である。

そこで、前記損害額からその一割を控除すると、八二七四万八二七五円となる。

三  損害填補(二二一〇万五九一八円)

支払済みの二二一〇万五九一八円を控除すると、六〇六四万二三五七円となる。

四  弁護士費用 五五〇万円

本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は、五五〇万円と認めるのが相当である。

五  よって、原告の請求は、六六一四万二三五七円及びこれに対する本件事故の日である平成八年七月二九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

(裁判官 吉波佳希)

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